医学部卒業後の進路決定 | 福岡市の脳神経外科「薬院河島脳神経外科クリニック」MRI検査・脳ドック等

医学部卒業後の進路決定

日記福岡市の脳神経外科医コラム

皆様こんにちは。福岡市中央区の薬院河島脳神経外科クリニック院長の河島です。本日は医学部卒業後の進路決定についてお話ししたいと思います。

医学部を無事に卒業したら

医学部は通常6年かけて卒業します。ただし受験が終わり大学入学してから全く勉強しなくなる輩が続出します。このため各学年の進級試験に落第し留年する人も結構出てきます。私の入学時の同級生は120人でしたが、20人ほどは留年したと思います。1回で済めばまだマシですが、2回、3回とする人もいて、私の知る中で最高は6回留年し12年かけて卒業した猛者もいました。苦労して医学部を卒業するとすぐに医師国家試験が待ち構えています。これに受かって初めて医師になれるので落ちたら大変です。医学部で過ごした時間が全く無駄になり本番の試験は皆大変緊張します。9割近くが合格する比較的易しい試験ですが、私の周りでも何人か落ちており油断はできませんでした。晴れて試験に合格すると医師免許が交付され、各々が研修医として働き始めます。

専門科の決め方

私が医学部に在籍していた当時は、自分の専門科は卒業前に決めていました。内科、外科、小児科など自分の好きな分野を決めた後に当該科(医局)の教授に挨拶に行けば内定となりました。いわゆる就活時期は6年生の秋頃で、若い労働力の必要な各医局からは勧誘の嵐でした。医局説明会の後は高級レストランや料亭に連れて行ってもらい学生には身分不相応な接待を受けました。興味のない科でも食事目当てで説明会に行く学生も多々いました。このような接待攻勢を経て各人は自分の専門とする科を決めていきます。家族や親戚の助言、部活の先輩の勧誘なども大きな要因ですが、多くの学生は自分の興味のある専門分野を選んでいたように思います。母校の専攻科を選ぶ人が多かったですが、他大学の医局を選ぶ人も少数ですがいました。私自身は脳の神秘性に惹かれたのと、直接治療できる外科医が好ましいと思ったので脳神経外科を選びました。

昨今のトレンド

最近「直美」という言葉を耳にしました。初期研修を修了直後に美容外科を専攻する若手が激増しているようです。私の時代には想像できないことでしたが、これも時代の流れでしょうか。個人的には最近の東大生が官僚になるのを避けて外資系企業を選んでいるというニュースを聞きましたが、同じような流れに感じます。最近の若い人たちは仕事に意味を見出すのと同等に自分自身のQOL(Quality of Life)を満たすことも重要と考えているのでしょう。
昔は医局に所属して医者として成長していくというモデルがスタンダードでした。そこから外れた者はあたかも落伍者であるような風潮がありました。しかしそのモデルは崩壊過程にあります。きっかけは2004年に始まった初期臨床研修制度でしょう。それまでは右も左も分からないまま医局にダイレクトに入局していた医学生が医師になって2年間は色々な診療科を回って研修するというシステムに変更されました。大学病院だけでなく市中病院での研修もOKになりました。その結果母校に残らず都市部の大病院で研修を始める医師が増加しました。また、医療現場を実際に体験してみると学生時代に持っていた思いも変わります。過重労働でプライベートも犠牲にしなければならないような診療科、例えば救急や外科、産婦人科などの勤務実態を知ると自ずと敬遠されやすくなります。待遇が同じなら、肉体的精神的に負担の少ない診療科に行きたくなるのも理解できます。私自身、前職では大学病院で脳神経外科の責任者を務めておりましたが新人をリクルートするのに大変苦労しました。
このような状況が根底にあって初期臨床研修制度が始まって20年経った今、「直美」や「外科医の減少」、「医療過疎」などさまざまな問題が生じているものと考えます。