皆様こんにちは。福岡市中央区の薬院河島脳神経外科クリニック院長の河島です。本日は脳神経外科手術の変遷についてお話ししたいと思います。
脳神経外科手術の創成期
近代脳外科手術が急速に発達したのは2度の世界大戦以降です。
火器に伴う重症頭部外傷の増加が脳外科手術の需要を増やしたようです。
当時の処置としては簡単な開頭手術が中心でした。
脳外科手術が飛躍的に進歩したのは1967年にチューリッヒ大学のヤサギール先生が手術用顕微鏡を導入してからでした。
それまで肉眼か簡便なルーペ(拡大鏡)しか使えなかった状況が一変しました。
脳深部まで明瞭に描出できるようになり、脳外科医は様々な病変に果敢にチャレンジするようになりました。
驚くことに、本格的な脳外科手術が始まってからまだ半世紀しか経っていないのです。
脳神経外科手術の発展
工業技術の発展は顕微鏡だけでなく、手術機器も進化させました。
使いやすく効率的な手術器具が使用できるようになり、より手術の安全性が高まりました。
脳腫瘍や脳動脈瘤といった難しい疾患に対して色々な手術アプローチが行われ、
国内外の学会・研究会などでの検討を通じて治療の標準化が行われてきました。
1970年-2000年代にかけて外科医自身が顕微鏡を使って行う現在の脳外科手術は急速に発展し、現在円熟期を迎えていると思います。
脳神経外科手術の現状
私が脳外科医になった頃は手術と言えば顕微鏡手術でした。
頭皮を切って頭蓋骨を開け、顕微鏡を見ながら脳を傷つけないように病変に近づき処理をする。
この一連の流れをいかに澱みなく行い、良い成績を残すかが全てでした。ブラックジャックの世界です。
ところが1990年代から徐々に脳血管病変、特に脳動脈瘤に対して血管内治療(IVR)が用いられるようになりました。
これは病気を血管の中から治療する方法です。カテーテルという細い管を血管の中に挿入し、動脈瘤の直近までアプローチします。
瘤の内側に金属製のコイルを留置することによって血行を遮断するものです。
治療成績も向上しており、開頭手術と遜色ないものになっています。
IVRの最大のメリットは皮膚や頭蓋骨、脳に傷を与える事なく治療できる事です。
成績が同じなら体により負担がかからない方法を選択するのは自然です。近年は脳血管病変にIVRを希望する方が増えています。
今後の脳外科手術
脳動脈瘤や頚動脈狭窄などの脳血管病変に対しては体の負担が低いIVRが主流になって行くと思います。
しかし、IVRで治療できない病変もありますので、開頭手術ができる人材を確保しておく必要性はあります。
問題は、今後脳血管病変を直接手術する機会が減ってくるので、そのような人材を育てるのは難しい状況が生じていることです。
脳腫瘍に関してはIVRでの単独治療は難しいので、顕微鏡や内視鏡を用いた開頭手術が第一選択で、
必要に応じて化学療法や放射線治療が組み合わされるものと考えます。
手術治療を行う上で大事なことは、できる限り体に負担をかけずに最良の治療効果を期待するという
minimally invasive surgery with maximum benefitsというコンセプトです。
