五感を使うことの重要性 | 福岡市の脳神経外科「薬院河島脳神経外科クリニック」

五感を使うことの重要性

日記

皆様こんにちは。福岡市中央区の薬院河島脳神経外科クリニック院長の河島です。 本日は五感を使うことの重要性についてお話ししたいと思います。

五感とは

五感とは視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚を指します。それぞれ脳の決まった場所に中枢が存在します。例えば視覚伝導路というものがあります。眼から入った情報は網膜から視神経を通って、中脳、側頭葉を経由して最終的に後頭葉の視覚中枢で処理されます。聴覚・味覚中枢は側頭葉にあり、触覚中枢は頭頂葉にあります。嗅覚中枢はまだ全容が解明されていませんが、視床や視床下部などの間脳や側頭葉内側部に存在しており、記憶中枢との関係性が高いようです。香りと記憶の関連性は多くの方が感じているのではないでしょうか。ある匂いで特定の人物や情景を思い起こした経験は皆さんあると思います。五感で感じた情報は最終的に頭頂葉や前頭葉にも送られ、意味づけがなされ我々の行動決定の判断材料になります。

五感はきちんと働いているか?

我々の日常生活を振り返って見ましょう。多くの人が視覚・聴覚情報に依存し過ぎている傾向にあると思います。朝起きてから夜寝るまで、TV、PC、スマホにどっぷり浸かっています。食事中でもネット断ち出来ない人も多いようです。会話も電話やオンラインで話す機会が増え、直接的な交わりが減少しています。このような状況では嗅覚、触覚、味覚などは使われる頻度が減少し、五感の使用バランスが悪くなります。これは何を意味しているかというと、脳の一部の領域のみが過度に興奮状態が持続していて、その他の領域が有効活用されていないことになります。脳機能は広い範囲を利用するように設計され配置されているのに、それを無視している状態になります。脳にとってはストレスのかかる状況で、不健康な状態といえます。

五感の回復を目指して

東北地方の山奥に電気も携帯電話も使えない温泉旅館があるのですが、国内外から多くの旅行客が集まっているというニュースを目にしました。そこではオイルランプの灯りの下で宿泊客が食事をしながら語り合ったり、温泉に入って星を眺めたり、山の中を探検したりして過ごしていました。なぜそのような不便な状況をあえて選んで出かけているのか不思議に思いますが、普段使っていない五感を使いたいという潜在的な欲求に起因しているかもしれません。
色々な匂いをじっくり嗅いだり、食物をよく味わって食べたり、周囲の物の感触を吟味するのは健康脳を保つ秘訣です。脳バランスを整え認知症を予防する上でも重要な取り組みと思います。